「15歳のナガサキ原爆」(渡辺浩)

ナガサキへ、黙祷

「15歳のナガサキ原爆」(渡辺浩)
 岩波ジュニア新書

前回はヒロシマへの
私の思いを綴りました。
今回はやはりナガサキを
取り上げたいと思います。
長崎へは平成15年に、
たまたま行く機会がありました。
担当していた部活動の生徒が
全国大会に出場、
その開催地が長崎だったのです。
私が訪問したときには
すでに原爆の面影は少なく、
異国情緒溢れる観光地としての
一面だけが目につきました。
しかし、時間を見つけて訪問した
原爆資料館は…、
目を覆うばかりの事実を
突きつけてきました。
今でも忘れられません。

こうした戦争の傷跡を、
何としても子どもたちに
理解させたいと思うのです。
それも大人になる前の、
感受性が豊かな時期に。
東北の片田舎に住んでいると、
それはなかなかできません。

戦争と向き合うことは、
大人でさえも
容易なことではありません。
ましてや今の中学生高校生であれば
なおさらです。
だからこそ、戦争という負の歴史を
指し示すことだけはしたいものだと
常日頃考えています。

またしても岩波ジュニア新書から
お薦めの一冊です。
本書「15歳のナガサキ原爆」です。
長崎と戦争とのつながり、
そして8月9日その日の、
さまざまな場所での被爆体験が
克明に記録されています。
中学生としての著者の身辺での
悲惨な体験が、写真資料と相まって、
心に抉り込むように伝わってきます。
本記事で、
本書の内容の多くは紹介しません。
ぜひ手にとって
読んでいただきたいと思います。
そして身のまわりの子どもたちに
薦めてほしいと思います。

それにしても、太平洋戦争について、
系統的に、しかも万人にわかりやすく
書き著された書物が少ないことに
憤然とします。

唯一、岩波ジュニア新書からは
前回取り上げた
「1945年8月6日」(ヒロシマ)、
本書「15歳のナガサキ原爆」(ナガサキ)、
他に「戦争と沖縄」(沖縄戦)、
「東京が燃えた日」(東京大空襲)、
「海に沈んだ対馬丸」(学童疎開の悲劇)、
「戦争の時代の子どもたち」
(戦時中の国民生活)、等々、
太平洋戦争の戦禍・戦渦について、
テーマを絞ってわかりやすく
丁寧に描かれている良書が
数多くあります。
こうした岩波書店の努力に
敬意を表しつつ、
かつ、こうした問題についての意識を
大人たちに啓蒙する意味で
本書を取り上げました。

ヒロシマ同様、今年も八月には
ナガサキの悲しい歴史へ、
静かに黙祷を捧げたいと思います。

※章立ては以下のようになっています。
1 ナガサキを知っていますか
2 少国民と戦艦「武蔵」
3 戦争している国の中学生
4 一九四五年八月九日
5 われわれの8.9
6 爆心地をこえて
7 再び爆心地へ
8 ナガサキ・デイ・アフター

(2020.6.23)

shikemaさんによる写真ACからの写真

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